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小児の腰痛

近年、大人だけでなく、子どもにおいても腰痛の有症率は増加傾向にある。自分も中学、高校とスポーツをしていて腰痛に悩まされてきた。

小児の腰痛は稀な症状として考えられてきたが、活動の多様化や生活様式の変化など様々な背景が関わり、近年の疫学的調査により稀な症状ではないことが明らかになっている。


腰痛は単なる整形外科的問題にとどまらず、生活・心理・発達の様々な側面が絡む総合的な問題として捉える必要がある

新潟市で実施された調査では、児童生徒の約3割が何らかの腰痛を経験し、特に思春期(※第二次性徴期)かけて有症率が急増する傾向が報告されている。

※第二次性徴

男児:12〜20歳

女児:10〜18歳


小児の腰痛は成人と比較して疾患範囲が広い

  • 急性外傷・・・骨折など
  • スポーツ障害・・・腰椎分離症(疲労骨折)など
  • 感染性疾患・・・化膿性脊椎炎など
  • 腫瘍性疾患・・・白血病、ランゲルハンス細胞組織球症
  • 心理的、社会的要因・・・家庭環境、学校生活など

【問診】まずは「誰から、どんな情報を得るか」を意識

〈注意すべきポイント〉

低年齢児は保護者からの情報に依存することが多く、年長児になるにつれて本人の主訴を重視する姿勢が求められる。

保護者の主張と患児の実際の訴えに相違がある場合も少なくはないため、その差異が来院動機に影響していることを踏まえて問診を進めることが重要。


【問診】次に「疼痛の発生様式」を明確にする

〈時系列で疑う〉

  • 急性発症・・・外傷、感染症
  • 緩徐進行・・・疲労骨折、腫瘍性疾患

〈疼痛部位の確認〉

場所よりも動作で聞くことで、疼痛の再現性を確認しやすい。

🙅「どこが痛む?」

🙆「どの動きで痛い?」

また、疼痛が軽度でも、夜間痛安静時持続痛神経学的異常を伴う場合には、重篤な疾患が隠れている可能性があることを頭に入れておく。


【問診】学校生活や人間関係のストレスなど、心理的要因が腰痛に関与していることがある

発育期では、スポーツによる身体的過負荷が腰痛の主要因となることが多いが、家庭環境や学校生活など心理的、社会的要因が症状に関与していることもある。

競技レベルの高いジュニアアスリートでは、競技特性に伴う反復動作による身体的疲労と、様々なプレッシャーによる精神的疲労が複合的に作用していることがある。

・オフの日に痛みが軽減するか

・大会や大事な試合が近づくと痛みが増強するか

などを確認することで、心理的、社会的因子の関与を把握しやすい。

保護者や指導者の過剰な期待などが患児を圧迫していることが考えられる場合は、患児と保護者を分けて問診することが有効である


【身体評価】患児と保護者の訴えに乖離がみられることもある

低年齢児では訴えが曖昧であることが多く、保護者の認識と乖離がみられることもある。

身体評価は、情報の整合性を確認し、臨床的「答え合わせ」を行う過程として重要な意味をもつ。


【身体評価】発達段階に応じた評価視点をもつ

  • 乳幼児期(06歳)運動発達段階の確認と、歩行やジャンプなどの基本動作時にみられる疼痛回避動作の観察
  • 学童期(612歳)疼痛誘発テストを含む他覚的所見の確認を重視
  • 発育期(12歳以降):成長に伴う筋・骨格バランスの不均衡(筋タイトネス)に留意し、疼痛誘発動作疼痛誘発姿位を自発的に取らせて再現性を評価

発育期前後に大腿四頭筋・大腿筋膜張筋・ハムストリングスのタイトネスを生じると、骨盤の前傾・後傾を介して腰椎のマルアライメントを呈し、腰部への負担が増大する。


【身体評価】観察・確認

座位:脊柱アライメント、骨盤傾斜

立位:脊柱アライメント、骨盤傾斜、左右の肩甲骨の高さ

特に、体幹前屈位における肋骨隆起や腰部隆起は、脊柱側弯症の重要な徴候である。


【身体評価】疼痛誘発テストの目的

疼痛部位と疼痛誘発動作を明確化すること。

腰椎伸展位やKempテストで疼痛が誘発される場合、腰椎分離症、椎間関節障害、骨盤輪骨折などを疑う。

柔軟性の評価では、ハムストリングス、腸腰筋、大腿四頭筋のタイトネスを確認し、体幹筋および殿筋の筋力バランスを併せて評価する。

体幹筋の左右差は腰部への過負荷や代償動作を生じる要因となる。


【身体評価】Joint-by-Joint理論

『胸郭・股関節は可動性、腰椎は安定性』を基本原則として指導することが重要。

腰椎の前後屈や回旋動作で疼痛が明確に再現されない場合でも、跛行や立位・歩行時の体幹傾斜がみられる際には、感染症や腫瘍の存在を念頭に置いて考える必要がある。


【鑑別疾患】小児で腰痛が2週間以上持続する場合は、その約半数が腰椎分離症であったと報告されている

腰椎分離症は小児期に好発する疲労骨折であり、学童期(6〜12歳)の症例が全体の約3割を占めるとされる。

若年小児でも稀ではなく、小児の腰痛と向き合う際に、まず念頭に置くべき疾患である。


【まとめ】器質的疾患を正確に判断することが最も重要

成長期には、腰椎分離症をはじめとする疲労骨折、感染症、腫瘍性病変など多様な疾患が潜在しているため、早期に病態の把握をし、適応外の場合は病院への受診をすすめるなど適切な対応が第一の責務。

器質的疾患の有無を明確にしたうえで、保護者への説明に加えて、患児自身が病態と治療目標を理解し、納得して改善に臨めるように配慮することが重要。

疼痛の持続や再熱に心理的、社会的要因が関与する場合には、家庭・学校・競技環境などの背景を考慮し、患児と保護者への適切な説明と支援を行うことが望ましい。

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