頸部・肩・腕の痛みに対する適応症状と非適応疾患の鑑別のコツについて学ぶ。
○ 頸部の痛みは多くの人が経験する痛みであり、一般的な来院理由の一つでもある。
○ 肩痛や上肢痛はQOLの低下にも大きく関係するため、患者さんの訴えを理解するために必要な知識。
頸部・肩・上肢の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】を元に解説していく。
頸部の痛みの鑑別の重要性
✔️ 発生源を理解
〈 頸部の構成組織 〉
筋・筋膜
腱・靱帯
椎骨・椎間関節
椎間板
上位頸神経 など
⇨ 筋・骨格系の痛みによく出会す。
☆ 重要ポイント
これらの軟部組織・支持組織による痛みと、腫瘍や感染など重大な病変もつ腫瘍浸潤や頸椎骨転移・病的骨折、また、椎間板炎、化膿性脊椎炎、頸部硬膜外膿瘍などとの鑑別。
筋・骨格系の痛みの場合、通常は患者さんの訴える部位を圧迫すると「圧痛」がみられる。また、明確な神経学的欠損はほとんどみられず、症状がその部位に限局しているケースが多いのが特徴的。
・患者さんの訴えと神経学的所見が一致しない場合
→ 心因性疼痛が疑われる
「五十肩」 「肩こり」発生のメカニズム
肩痛では、よく肩関節周囲炎(五十肩)がとりあげられる。
下部頸椎性の原因に基づく場合も。
肩関節は体の中で最大の可動域を有している関節であり、 解剖学的関節や機能的関節が関与して、可動域を生み出している。
加齢により変性をきたし、外傷や運動によって関節内の炎症・損傷をもたらす。
また、肩関節内には上腕二頭筋長頭腱の走行があり、結節間構表面は上腕横靱帯が覆い、腱鞘のような構造になっている。この部分は、長頭腱が炎症や摩耗変性を生じやすい状態になっていて、このように生じた一連の障害が肩関節周囲炎とされている。
※圧痛部位が明確でない場合につけられる病名
・圧痛部は複雑な病変部を推定するのに役立つ。
・肩こりは頸肩部でよくみられ、筋・筋膜疼痛症候群もよくある疾患。
・頸肩腕部の痛みを主訴とするものも、原因が特に明確ではない疾患を「頸肩腕症候群」と診断される。
上肢の疼痛2タイプ
「 頸椎由来の痛み 」と「 上肢に限定される痛み 」
○ 上肢に限定される痛み
・上腕骨内側上顆炎、外側上顆炎
・変形性肘関節症、変形性手関節症
・母指CM関節症
・絞扼性抹消神経障害(手根管症候群、回内筋症候群、ギヨン管症候群、肘部管症候群、橈骨神経管症候群)
○頸椎由来の痛み
頸部由来の痺れや上肢痛が皮膚分節に沿ってみられる。

疑うべき疾患として…
・頸椎症性神経根症
・頸椎椎間関節症
・CDH
・外傷性頸部症候群
・パンコースト症候群 などがある。
腫瘍疾患は高齢者に多くみられ「 夜間痛 」 「 安静時痛 」が特徴的。
まとめ
僕たちは診断ができない。あくまでも疑うこと。肩が痛い、頸が痛いなどと訴える患者さんに対して適切な判断をし、重大な疾患を見逃さないようにしなければならない。
筋・骨格系の痛みだけでなく、感染性疾患などの整形外科疾患をよく勉強し理解する必要がある。


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